2023.9.14
仙台市主催・令和5年度百年の杜フォーラム 登壇レポート
株式会社パソナ日本総務部(以下、当社)は2023年6月11日に、令和5年度百年の杜フォーラム(仙台市主催)・第1部「知って活かそう、日々の暮らしの緑の効果」に参加しました。
第1部「知って活かそう、日々の暮らしの緑の効果」は、まず基調講演として、千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 岩崎 寛氏による基調講演「緑で育む健康生活 ‑植物の心身への効果に着目して‑」と題して講演があり、その後、千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 岩崎 寛氏、公益財団法人みやぎ・環境とくらし・ネットワーク 亀崎 英治氏、当社代表取締役副社長の岩月隆一とのトークセッションが行われました。
基調講演「緑で育む健康生活 ‑植物の心身への効果に着目して‑」
千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 岩崎 寛 氏
コロナ禍の緊急事態宣言中、植物を育てる人、公園へ行く人が増えました。ドイツでもロックダウン中に売れ行きが伸びた商品の第二位が園芸用土で、世界中で緑に関わる人が増えています。
人々が緑を求める理由は、植物にはストレスを軽減する効果があるからだと考えられます。コロナ以前、東京ミッドタウン勤務者を対象に行ったアンケートでは、都市に緑が必要な理由として、癒し効果・リフレッシュ効果・休息場所としての回答が半数を超えました。コロナ以前から、緑に対して心身に対する効果を期待しており、感染症拡大によりその期待が増大したと言えます。
森林だけでなく、都市公園に植栽された樹木でもストレス軽減に寄与することが研究によって分かっています(都市緑化樹木の揮発成分によるストレス緩和作用--クスノキを用いた実験 岩崎 寛, 山本 聡, 渡邉幹夫)。
また、「公園浴」(緑地で5分間滞在することで森林浴と同様の効果を得る健康法)もコロナ禍以降、注目を集めています。
植物による健康効果は、植物と関わることで体調を元の健康状態(良い状態)に戻すということです。例えば、ラベンダー畑や芝生の前で座って5分間過ごすことで、血圧を正常値に近づける効果が確認されました。植物と関わることで人々の自然治癒力が高まるのです(都市公園内の芝生地およびラベンダー畑が保有する生理・心理的効果に関する研究 岩崎 寛, 山本 聡, 石井麻有子, 渡邉幹夫 日本緑化工学会誌 33(1) 116-121 2007年)。
このような効果を活かした実践方法として園芸療法があります。園芸植物を育てたり収穫したりすることで、将来への希望や楽しみを感じ、満足感や充実感を得ることができます。園芸療法は高齢者施設での活動やリウマチ患者のリハビリテーション、特別支援学校(知的障害)のプログラム、震災被災者のメンタルケアなどで効果的に活用されています。
植物の効果を生活に取り入れる方法として、視界に植物を配置することがストレスの緩和に役立つことが分かっています(屋内空間における植物のストレス緩和効果に関する実験 岩崎 寛, 山本 聡, 権 孝二, 渡邉 幹夫 日本緑化工学会誌 32(1) 247-249 2006年)。例えば、リビングに植物を置く場合は、テレビ横など視界に入る位置に配置すると効果的です。
以上のことから、植物にはストレスケアや園芸療法による健康増進の効果があることがわかります。できる範囲で、日常的に植物と関わっていただきたいと思っています。
トークセッション
トークセッションでは、「さまざまな場での緑化の効果」「仙台市ならではの緑の活用」「日々の暮らしへ緑を取り入れるには」など、活発な意見交換がされました。
オフィス緑化について、当社代表取締役副社長の岩月より「オフィスの空室率が低下している状況に加え、従業員の出社率が増加していることから、経営層の方々は新たなオフィス環境の整備に関心を寄せています。従業員に、より集中できる空間を提供したい、コミュニケーションを活発に行える場を提供したい、さまざまなアイデアが生まれるような雰囲気を作りたいとも考えています。こういったニーズから、コモレビズ導入に関するお問い合わせが増えています。また、健康経営とウェルビーイングが社会全体で重要視されています。経営層の方々には、緑が人々にもたらす効果について正しい知識を持っていただき、その知識を活用して従業員の健康を促進するオフィスづくりに繋げていただきたいです。」と話がありました。
教育現場での緑化について、亀崎氏より「子どもたちには、社会全体への夢と希望を持ってほしいという想いから、緑を使った環境教育やグリーンカーテンに取り組んできました。グリーンカーテンは何カ月もの間、じっくりと育てていく必要があるため、例えば4階まで成長させるなど、植物のお世話をすることになります。学校では、動物を飼うことが難しい場合もあるため、植物にも生命があることを伝えています。毎日のように植物の成長を気にかけ、子どもたち自身が観察していくことで、その成長を実感する機会が増えました。」とお話いただきました。
緑化を推進する上で一番大切なこととして、岩崎氏より「次世代の子どもたちに自然・緑を残すことが何よりも大切です。現在、自然との関わりが減少しています。だからこそ、子どもたちが自然や緑に触れ、その心地よさを感じる機会が必要です。もし子どもたちが緑の価値を実感できないまま成長すれば、将来的には緑が失われてしまうかもしれません。私たちは環境教育、緑のある空間を残すことで、次世代の子どもたちに緑の大切さを伝える役割があります。また、周りの子どもたちにも、緑や自然の素晴らしさを実際に経験させてほしいと思います。」とお話いただきました。
【講師紹介】
岩崎 寛氏
千葉大学大学院 園芸学研究科 環境健康学領域 准教授
日本園芸療法学会認定 上級園芸療法士 日本緑化工学会副会長
日本学術復興会特別研究員、兵庫県立大学講師を経て2005年より現職。
日本園芸療学会理事。日本ガーデンセラピー協会理事などを歴任。
著書にNHKテキスト「趣味の園芸」に2020年4月号から1年間連載した「心と体にやさしい園芸療法」などがある。
亀崎 英治氏
公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク スタッフ
宮城県及び仙台市内各域の小学校に勤務。教員時代は、主にまちづくり学習や環境教育などを行ってきた。 2020年から現在の職場に就いて、「みやぎのSDGs環境学習支援」として環境や防災に取り組もうとしている学校を外部から支援する活動を行っている。