2018.4.23
5回連続セミナー「『場作り』戦略総務スペシャルプログラム」
第3回「生産性、集中する環境、エビデンス」開催レポート
株式会社パソナ日本総務部(以下、当社)では2018年2月より、5回連続セミナー「オフィス革新セミナー2018『場作り』戦略総務スペシャルプログラム」を開催しています。
本セミナーは、企業の喫緊の課題でもある「企業の生産性向上」について、場作りの視点から掘り下げて考える連続セミナープログラムです。第3回は「生産性、集中する環境、エビデンス」をテーマに開催いたしました。
今回は、株式会社ジンズ JINS MEME事業部の事業統括リーダーの井上一鷹氏にご登壇いただきました。
「JINS MEME (ジンズ・ミーム)」とはスマートフォンのアプリケーションと連動して「集中度」を測定する、メガネ型ウェアラブルデバイスです。また、JINSの新規プロジェクトの一環で、“世界一集中できる環境”を目指し進化し続ける会員制ワークスペース「Think Lab (シンク・ラボ)」を運営されています。Think Labには当社が提供する、エビデンスに基づいたオフィス緑化サービス「COMORE BIZ(コモレビズ)」を導入いただいています。
今回のセミナーはThink Labに近接する、株式会社ジンズの本社にて開催しました。
井上一鷹氏 講演「生産性、集中する環境、エビデンス」サマリー:
「生産性」の向上は、今後の日本において重要な課題です。将来的な労働人口の減少と、残業時間の短縮という社会要請の中で、現在のGDP水準を維持するには、生産性を現在の1.5倍にする必要があります。
昨今「働き方改革」が叫ばれているものの、その議論は「労働時間の短縮」にとどまりがちです。
この原因は、定量化出来るのが時間軸しかない為であると考えられます。もし、生産性を計測できる指標があれば、より本質的な議論が出来ると考えています。
この1つの解として、「集中度」を測定するJINS MEMEがあります。人間が集中出来るのは4時間であると言われており、限られた時間をいかにクリエイティブな仕事に充てることが出来るかで、生産性は大きく変わります。現在、JINS MEMEには5,000名ものユーザーデータが集まっており、時間帯・場所・曜日など様々な角度から「集中度」を分析しています。その中でも「場所」に関しては、殆どのユーザーにおいて公園や図書館で高い集中度が引き出される一方、オフィスでの集中度が最も低いという興味深い結果が出ています。
最近のオフィスはコミュニケーションに重点を置いた設計となっており、また、断続的に電話・メール対応が入る環境です。人が集中するまでには23分を要することが学術的に証明されていますが、このようなオフィス環境では、集中に入るためのアイドリングタイムが中断され続けていると言えます。
イノベーションの専門家が「両利きの経営」として提唱するように、イノベーションの創出には、「集中」と「コミュニケーション」の両軸が必要です。そして、まずは1人で考えることで知を深め (=集中) 、その後にディスカッションを行う(=コミュニケーション) ことで、よりブラッシュアップさせるというプロセスが重要です。
先述のとおり、昨今のオフィスはコミュニケーションに重点を置いていますが、個々人が知を深めないまま議論をしても新しいものは生まれません。日本でイノベーションが生まれにくいのは、個人が知を深めるために集中する環境が不十分なためではないかと考えています。
集中する環境を作るには、従業員個人が自助努力で賄う部分以上に、企業がオフィス環境を整えることが重要です。エビデンスに基づいた、生産性を引き出す・集中出来るオフィス環境を提供することで、イノベーションの創出に寄与できると考えています。
井上氏の講演後、参加者はThink Labを見学し、「世界一集中できる環境」を体感しました。
見学後、前回に続きファシリテーターを務めていただいた月刊総務の豊田健一編集長より「(様々なオフィスを見る中で) 今後のオフィスに求められているものが“コラボレーション”から“個の強化”へ変化していると感じる」と総括がありました。
その後の質疑応答セッションでは、「集中の場とコミュニケーションの場を両立する十分なスペースがない場合に、どのようにするのが良いのか」「個人で集中しつつ、何かを聞きたい時にはすぐに聞けるオフィス環境をどう作ればよいか?」など次々と質問が上がり、活発に意見交換がされました。
【講師紹介】
株式会社ジンズ
JINS MEME事業部 事業統括リーダー 井上一鷹 氏
慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルに入社し大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事したのち、2012年に(株)ジェイアイエヌ(現・株式会社ジンズ)に入社。
社長室、商品企画グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て、現職。
数学が得意で、算数オリンピックではアジア4位、数学オリンピックでは日本のファイナリストになった。