車両管理とは?主な目的・業務内容と手間を削減する方法を解説
車両管理とは?主な目的・業務内容と手間を削減する方法を解説

車両管理は、社用車をはじめとする車両を保有する企業にとって欠かせない業務です。そのため、ルールにのっとり適切に遂行する必要がありますが、具体的にどのようなことを行うのかご存じでしょうか。
主な業務内容とあわせて、手間を削減する方法を知っておくと、効率的に車両管理を遂行できます。
今回は、車両管理の概要や目的、業務内容などをご紹介します。あわせて、車両管理をデジタル化・業務委託するメリット、パソナ日本総務部の「車両管理BPOサービス」についてもまとめています。ぜひ最後までご覧ください。
車両管理とは?
車両管理とは、企業が保有する社用車などの車両を管理する業務のことです。ここで言う車両には、リース契約で利用している車両も含まれます。
詳しくは後述しますが、車両管理の業務は「車両管理規定・車両管理台帳の作成」「車両・ドライバーの管理」「車検対応・自動車税の納付」などさまざまです。これらを主に安全運転管理者が行います。
安全運転管理者に関しては、乗車定員11人以上の自動車1台以上、またはそのほかの自動車を5台以上所有している企業に選任義務があるため、あわせて覚えておきましょう。
車両管理はなぜ必要?主な3つの目的
車両管理を行う目的には、以下の3つが挙げられます。
1.従業員の安全を確保するため
車両管理の最大の目的は、従業員の安全を確保することです。
仮に整備不良の車両をそのまま利用した場合、重大事故につながる可能性が極めて高くなります。もし事故が起きて従業員がケガを負うなどすれば、企業の重要な資産である人材を危険にさらしていることになります。また事故の内容によっては社会的信用を失い、企業の存続が危ぶまれる可能性もあります。こうした事態を避けるために、徹底した車両管理を行う必要があるのです。
2.資産やコストを適切に管理するため
企業の資産である車両を適切に管理することは、資産価値の維持・向上に大きく寄与します。
また、ガソリン代や点検整備費など、車両に係る経費を適正化することも車両管理の重要な目的です。可能な範囲で節約すれば削減が叶い、コストをより適切に管理できるようになります。
このように車両管理には資産・コスト管理の側面もあります。
3.法的な責任を果たすため
車両の点検・整備や従業員への安全運転教育、安全運転管理者の選任など、車両管理の業務には法令で義務付けられているものがあります。これらを遵守することも車両管理の目的のひとつであり、企業は法的な責任を果たし、社会的信頼を守ることができます。
また、車両管理の目的には、法的なリスクを回避することも挙げられます。
仮に社用車が絡んだ交通事故が発生した場合、ドライバー本人だけでなく、その雇い主である企業にも損害賠償責任が問われます。これは民法第715条「使用者等の責任」で定められています。
ただし、民法第715条では同時に「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」としています。
日々適切に車両管理を行い、ドライバー(従業員)への安全運転教育を徹底している場合は、例外となるケースもあるということです。こうした観点からも車両管理の必要性は高いと言えます。
具体的に何をする?車両管理の業務内容

車両管理の具体的な業務内容は以下のとおりです。
車両管理規定の作成(見直し)
車両管理規定とは、従業員が業務中に車両を利用する際のルールをまとめたものです。一般的には以下のような内容を盛り込みます。
- 安全運転管理者の選任について
- 車両管理台帳の作成
- 運転者台帳の作成
- 安全運転の確保
- 車両の保守点検および整備
- 保険の付保
- 事故発生時の対応
- 社用車の私的使用について
- マイカーの業務利用について
車両管理規定を定めたら従業員に共有して、その内容を徹底する必要があります。また、こまめに見直しを行い常に最新の状態を保つようにしましょう。
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車両管理台帳の作成
車両管理台帳とは、企業が保有している車両の登録番号や使用状況、保険の加入状況や期限、車検日時などの情報をまとめたものです。具体的には以下のような内容を盛り込みます。
- 車両を特定するための情報
- ・車両本体に関する項目
(車名・メーカー・登録年度・車体番号・型式・色・登録番号 など)
・購入や廃車に関する項目
(購入または廃車年月日・購入先・リース期間 など)
- 車両の状況を把握するための情報
- ・車検や整備に関する項目
(車検有効期限・車検の実施状況・整備工場名・整備状況 など)
・使用部署や管理に関する項目
(所属・ドライバー・安全運転管理者・変更履歴 など)
・修理や事故の履歴
- 車両の保険情報
- ・自賠責保険
(有効期限・保険会社・証券番号・保険金額 など)
・任意保険
(保険期間・保険会社・証券番号・保険内容・保険代理店 など)
車両管理台帳の管理方法として、従来は紙やExcelが一般的でしたが、近年はクラウドシステムなどを活用する企業が増加しています。自社に合った方法で管理しましょう。
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ドライバーの管理
車両を利用するドライバーの免許内容や運転適性、健康状態、安全運転教育の実施有無、運転技能などを確認し管理します。2022年4月に行われた道路交通法の改正により、安全運転管理者を選任している企業にはアルコールチェックが義務付けられたため、該当する場合は漏らすことなく実施しましょう。
車両の管理
従業員が安全に車両を使用できるよう、車両本体を管理します。具体的には、車両管理台帳の管理や自動車保険の加入・更新、車両の点検・整備、車両の使用頻度や走行距離の確認などを行います。
車検対応・自動車税の納付
車検対応や自動車税の納付も、車両管理の業務のひとつです。管理が煩雑で有効期限があるため、車両管理台帳を確認しながら抜け漏れのないよう対応する必要があります。
車両管理を始める際の流れ
車両管理を新たに始める、あるいは見直す際には、場当たり的に進めるのではなく、体系的なステップを踏むことが成功の鍵となります。ここでは、車両管理体制を構築するための基本的な4つのステップをご紹介します。
ステップ1:安全運転管理者を選任する
まず行うべきは、「安全運転管理者」の選任です。道路交通法では、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所ごとに、安全運転管理者を選任することが義務付けられています。
安全運転管理者は、運転者の状況把握や安全運転指導、運行計画の作成など、車両管理における中心的な役割を担います。資格要件(20歳以上、2年以上の運転管理実務経験など)を確認し、社内から適任者を選出した後、15日以内に管轄の公安委員会へ届け出る必要があります。
ステップ2:車両管理規程を作成し、周知する
次に、社用車を利用する上での社内ルールである「車両管理規程」を作成します。この規程は、万が一事故が発生した際に、企業として適切な監督責任を果たしていたことを示す重要な根拠となります。
規程には、車両の私的利用の禁止、事故発生時の報告義務、日常点検の実施、交通違反時の罰則など、車両の安全な利用に関する具体的なルールを明記します。作成後は、全従業員に周知徹底し、規程が形骸化しないように運用することが重要です。
ステップ3:車両管理台帳を作成し、情報を一元化する
社内で使用している全ての車両情報を一覧化した「車両管理台帳」を作成します。この台帳で、車種や登録番号といった基本情報から、車検の満了日、リース契約期間、自動車保険の加入状況、定期点検の履歴まで、車両に関するあらゆる情報を一元管理します。
情報が一元化されることで、管理が煩雑になりがちな車検や保険の更新漏れを防ぎ、各車両の状態を正確に把握することが可能になります。
ステップ4:管理方法(システム導入またはBPO)を検討・決定する
最後に、これらの管理業務をどのように効率的に運用していくかを検討します。従来のアナログなExcel管理では、情報の更新や共有に限界があります。
そこで、近年の主流となっているのが「車両管理システム」の導入です。システムを使えば、車両予約から日報作成、アルコールチェック記録まで、多くの業務をデジタル化し、大幅な工数削減が期待できます。
さらに、管理業務そのものを専門業者に委託する「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」も有効な選択肢です。これにより、担当者は車両管理の煩雑な業務から解放され、業務改善やコスト削減など、より戦略性を求められるコア業務に集中することができます。
車両管理で陥りがちな課題
車両管理は業務が多岐にわたるため、多くの企業が共通の課題に直面しがちです。ここでは、代表的な4つの課題をご紹介します。
課題1:運転免許証や車検などの更新漏れが発生する
車両やドライバーの数が増えるほど、運転免許証の有効期限、車検の満了日、自動車保険の更新日などの管理は煩雑になります。担当者がExcelなどで手動管理している場合、多忙な業務の中で確認を怠ってしまい、気づいたときには期限が切れていたという事態が発生しがちです。無免許運転や無車検運行は、重大な法令違反となります。
課題2:紙媒体での記録・保管に手間がかかりすぎる
運転日報や日常点検記録、アルコールチェック記録などを紙で運用している場合、その管理には多大な手間とコストがかかります。ドライバーは毎日手書きで日報を作成し、管理者はそれを回収、内容を確認してファイリングする必要があります。また、法令で定められた保管期間(通常1年間)もあり、保管スペースの確保も課題となります。
課題3:アルコールチェックの運用が徹底されない
2023年12月1日からアルコール検知器の使用が義務化され、アルコールチェックの運用はより厳格化されました。しかし、直行直帰の従業員に対してどのように確認を行うか、なりすましなどの不正をどう防ぐかなど、実運用における課題は少なくありません。記録の不備やチェック漏れは、企業の安全配慮義務違反を問われるリスクにつながります。
課題4:車両の稼働状況が不明確でコストが最適化できない
「どの車が、いつ、どれくらい使われているか」という稼働状況を正確に把握できていないケースも多く見られます。その結果、一部の車両しか使用されていないにもかかわらず、全車両分の維持費や駐車場代、保険料などの固定費を払い続けている「遊休車両」が発生しがちです。稼働実態が不明確なままでは、車両台数の適正化やコスト削減を進めることは困難です。
車両管理をデジタル化・専門業者に外部委託して手間を削減
車両管理の業務は多種多様で、複数台の車両を管理するとなると、車検ひとつを取っても多大な時間と労力が必要になります。また車両管理に関する複数の業務をすべてアナログな手法で対応するには限界があります。より効率良く車両管理を行うなら、デジタル化や専門業者に外部委託を検討するのも一案です。
たとえば、車両管理システムを利用してデジタル化した場合、ドライバーや車両の情報を見える化できます。それぞれの状態をデータとして確認することが可能になるため、ドライバーから自己申告を受けたり自らチェックしたりする手間が省け、効率良く業務を遂行できます。
また、車検の時期なども自動で通知してくれるため、対応の抜け・漏れも防ぎやすくなるでしょう。
また車両管理を外部委託した場合は、上述したような多種多様な業務を一任できるため、業務にかかる手間を大幅に削減できます。その分、判断や企画を伴う、より重要なコア業務に時間を割くことが可能になります。
管理業務を網羅的に委託!「車両管理BPOサービス」のすすめ
手間削減のため車両管理の業務を外部委託するなら、ぜひパソナ日本総務部の「車両管理BPOサービス」をご利用ください。
車両管理BPOサービスは、車両管理のあらゆる業務をお任せいただくことで、利用企業さまの業務負担を軽減するとともに、業務改善も実現するBPOサービス (※1)です。
(※1) BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、業務プロセスの一部または全部を専門会社に委託する手法のこと
車両リース契約の管理や運転許可者管理、アルコールチェックの運用、運転日報管理など、車両管理に関する一部の業務から複数業務の組み合わせまで幅広く対応します。また、他部署や各拠点、リース会社など社内外との調整業務や、その他付随業務も丸ごとカバーするので、車両管理における業務負担を大幅に削減できます。
また業務の実施形態についても、業務の性質や量に応じて、貴社の拠点内で業務を行う常駐型(オンサイト)や、当社の拠点内で業務を行う遠隔型(オフサイト)を選択していただくことも可能です。
このほか、より効果的な運用方法や業務フローの提案も行います。
例1)クラウドシステムを活用したアルコールチェックの運用方法を構築、代理確認まで行うことで、安全運転管理者さまの運用面の課題を解決
例2)テレマティクス (※2)の活用で走行時間やルートなどのデータを取得し、運転記録の取りまとめを実施。煩雑な紙による運転日報管理を効率化。
このようなシステムや機器の手配も、専門会社と連携して支援いたしますので、安心してご利用いただけます。
(※2)テレマティクスとは、自動車に通信システムを搭載し、リアルタイムに運転や位置情報を提供するサービスのこと
車両管理に関するよくある質問
- 安全運転管理者はどのような企業で必要ですか?
-
道路交通法に基づき、乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用している企業、またはその他の自動車(自動二輪車を除く)を5台以上使用している企業(事業所ごと)で選任が義務付けられています。自動二輪車は1台を0.5台として計算します。
- 車両管理規程に罰則を設けることはできますか?
-
はい、可能です。ただし、罰則を設ける場合は、その内容が就業規則の懲戒規定と整合性が取れている必要があります。また、罰則の内容が社会通念上、妥当な範囲内であることも重要です。従業員の安全意識を高めるためのルールとして整備することが望ましいでしょう。
- リース車両も管理の対象になりますか?
-
はい、対象になります。車両管理は、所有形態(自社保有かリースか)にかかわらず、事業活動で使用する全ての車両に対して行う必要があります。リース車両についても、企業は使用者としての責任を負うため、日常点検や運転者の管理、事故発生時の対応などを適切に行わなければなりません。
- どこまでの業務をアウトソーシング(BPO)できますか?
-
車両管理に関するほとんどのノンコア業務をアウトソーシングすることが可能です。パソナ日本総務部では、以下のような業務を網羅的にサポートしています。
● 車両管理台帳の作成・更新
● 車検・点検のスケジュール管理と業者手配
● 保険の契約・更新手続き
● 運転日報のデータ化・管理
● アルコールチェック記録の管理・督促
● リース会社との各種調整業務
これらの業務をまとめて委託いただくことで、貴社の総務・管理部門担当者様を煩雑な業務から解放し、企画立案などのコア業務に集中できる環境を構築します。
- システム導入とBPO、どちらがおすすめですか?
-
どちらを選択するかは、貴社のリソース、目的、そして車両管理にかけられる手間によって決まります。以下の点を参考にご判断ください。
● システム導入がおすすめの企業:
・管理業務は自社で行い、その効率を最大限に高めたい場合。
・リアルタイムでの車両動態把握など、自社でデータを活用した分析や改善を行いたい場合。
・管理業務を担当する部署や人員が既に確保されている場合。
● BPO(アウトソーシング)がおすすめの企業:
・車両管理に関するノンコア業務から完全に解放されたい場合。
・担当者の退職リスクや専門知識の属人化を防ぎたい場合。
・管理部門のリソースを、人事戦略や制度設計といったより付加価値の高いコア業務に集中させたい場合。
つまり、「業務のやり方は自社でコントロールしつつ効率化したい」のであればシステム導入、「業務そのものを専門家に任せてコア業務に集中したい」のであればBPOが適しています。
まとめ

車両管理は、法的な責任を果たしながら従業員の安全を確保するため、そして資産やコストを適切に管理するために必要な業務です。しかし、その業務内容は多岐にわたり、非常に頻雑です。
そこでおすすめしたいのが、ノウハウを持った専門会社に車両管理を委託することです。メイン業務だけでなく付随業務も丸ごと一任することで、業務負担を大幅に軽減できます。
抜け漏れのない徹底した車両管理を実現し、従業員の安全はもちろん、企業としての社会的信用を守るためにも、ぜひ車両管理の外部委託化を検討してみてください。