ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

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2023年08月10日 配信
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ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説
オフィス環境改善・施設管理

企業の経営資源は、一般的に「ヒト・モノ・カネ・情報」であるといわれています。このうち「モノ」は製品やサービス、そしてそれらを生み出す工場・オフィス・設備・機器などのことを指します。
こうした経営に関わるすべての施設とその利用環境を、単に維持して保全するだけではなく、経営戦略的な観点から管理しようというのが「ファシリティマネジメント」です。コスト削減や知的生産性・従業員のモチベーションアップにもつながると、今、日本のビジネス界で強い関心が寄せられています。
今回は、ファシリティマネジメントは従来の施設管理と何が違うのか、どう取り組めばいいのか、その結果としてどのような効果が期待できるのかについてご紹介します。

ファシリティマネジメントとは

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ファシリティマネジメントは、企業・団体が持つ設備や利用環境を戦略的に管理し、将来を見据えた最適化をはかろうという、アメリカで生まれたマネジメント手法です。
日本では建物をつくっては壊す「スクラップ&ビルド」という考え方が主流であったため、当初は「ファシリティを最大限に有効活用する」「運用コストを適正化する」というファシリティマネジメントの考え方はあまり浸透しませんでした。

しかし、バブル崩壊以降は建設資金などの調達が難しくなり、スクラップ&ビルドを前提に建てられた建物の老朽化で運用コストが増加するようになりました。そこで近年、あらためてファシリティマネジメントに熱い視線が寄せられているのです。

また平成9年より、日本においてもファシリティマネジメント認定資格である「認定ファシリティマネジャー(CFMJ)」の認定試験が開始されました。 企業や組織におけるファシリティマネジメントの専門知識・能力をはかるこの認定資格によって、日本国内においてもファシリティマネジメントの考え方が広く浸透し、総務や施設管理に携わる多くの人々がこの試験を受験するようになりました。

ファシリティマネジメントの定義

公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)は、ファシリティマネジメントを「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」のことだと定義しています。
つまり、目先のコストだけでなく、将来のことやそこで働く従業員のことなどを見据えた上でファシリティの長期的な最適化をはかるのがファシリティマネジメントです。

ファシリティはコストのかかる経営資源

ファシリティという単語には、「施設」「設備」「便宜」「便利さ」といった複数の意味があります。ファシリティマネジメントは単純に「施設管理」と訳すことがありますが、それは正確とはいえない場合があります。
ここでは、企業や団体の経営に関わる土地・施設・設備はもちろん、オフィス空間や人々の利用環境すべてを含めてファシリティとします。

ファシリティは「ヒト」と同じくコストのかかる経営資源です。建物や工場などを長く使えば使うほど、修繕の必要性などから運用コストは上がっていきます。しかし、運用コスト削減だけに注目し、改善や刷新など最適化の視点がないまま漫然と古い施設などを利用していると、そこで働く従業員の生産性やモチベーションが落ちかねません。

人材や人件費について経営的な観点から戦略を練るように、一般的に人件費に次いで大きいとされるファシリティコストについても経営的戦略を立てることが大切です。

今までの「施設管理」との違い

今までの施設管理は、維持と保全が主な目的でした。そのため、問題の発生した場所を修繕・交換・買い替えなどをすることで「問題発生以前の状態」「新築時の状態」に戻すといった管理を行います。
それに対して、ファシリティマネジメントは経営的・長期的な視点から最適化を行います。

例えば、空調が壊れたとしましょう。 従来の施設管理では修繕や買い替えを行いますが、ファシリティマネジメントでは「その場に空調は必要なのか」をまず検討します。その場の利用状況によっては空調が必要ないこともありますし、建物の更新期限が迫っているので高いものに買い替えるのは控える、ということもあるでしょう。空調が必要だという場合には、省エネルギータイプのものに替える、その場の高断熱化をはかるなど、何が最適なのかを考えて対応します。

従来の施設管理は総務などの担当者が行っていましたが、ファシリティマネジメントでは部門横断の枠組みでマネジメントにあたります。そしてファシリティについての情報・現況を常に把握した上で修繕や活用を考える必要があります。

ファシリティマネジメント(FM)とプロパティマネジメント(PM)の違い

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ファシリティマネジメント(FM)は、「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」の意味をもちます。

企業や組織の土地、建物、設備、備品のほか、オフィス空間での執務環境などもファシリティマネジメントの対象です。ファシリティマネジメントは、今ある施設や設備などを維持・保全することだけでなく、さらに良い在り方の実現に向けて最適化することを目的にしています。

一方のプロパティマネジメント(PM)は、一般的に不動産オーナー等から委託され、不動産の運営管理などを行うことを指します。例えば入居希望者への契約手続きの案内や家賃の集金、入居者からの問合せやクレーム対応など、不動産に関する管理業務を行うことを指しています。

参考:JFMA「ファシリティマネジメント(FM)とは」

ファシリティマネジメントのメリット

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ファシリティマネジメントの目的は「最小のコストで最大の効果」を得ることです。ファシリティの最適化をはかることで、経営の効率化・従業員やお客様の満足度の向上・企業の社会的責任(以下、CSR)の遂行などの効果が期待できるとされています。

投資コストの削減

ファシリティマネジメントによって企業の施設や執務環境の最適化を行うことで、トータルで見た投資コストの削減が期待できます。例えば最新の設備や機器、システムの導入で効率化を進めることで、業務に関わる人員数を削減できれば、人件費やリソース確保にかかる費用も削減できるため全体で見ると投資コスト削減になると言えます。
また、従業員数の減少によって物理的にスペースを確保できるようになれば、結果として施設や設備の有効活用やスペースの適正化にもつながるでしょう。

利用者の満足度と生産性の最大化

ファシリティマネジメントの徹底で、土地や建物、施設設備を快適に運用できるようになることで、結果として利用者の満足度が高まり生産性向上も望めるでしょう。最新設備の整ったオフィスで働く従業員は、設備整備が行き届いていないオフィスで働くよりも満足度が高いことが容易に想像できます。
オフィスへの満足度が高ければ、「この会社の成長に役立ちたい」「会社に貢献したい」という意識が自然に高まるものです。ファシリティマネジメントが従業員の生産性を最大化し労働環境を改善することで、会社利益の向上や労働環境の改善にもつながります。

オフィス環境の変化に対する従業員の適応力アップ

オフィス環境や就業スタイルの変化に伴い、従来と同じ環境では不足していると思われる要素を、ファシリティマネジメントによって浮き彫りにし改善に取り組むことで、働き方に関する変化への従業員の適応力アップも期待できます。
例えばフリーアドレスを導入した時に、気軽にちょっとした打ち合わせを行うスペースや、集中して作業できる個別ブースを設置することで、従来の固定席からの変化にも従業員がスムーズに適応し、生産性を維持させることもファシリティマネジメントの効果だと言えます。

社会や環境への対応(CSR)

ファシリティマネジメントによる設備機器の導入や見直しは、社会や環境に対しても良い影響を及ぼす可能性があります。例えば工場で運用中の機器や設備を環境性能の高いモデルに更新することで、脱炭素化やカーボンニュートラルの実現につながり、企業として環境問題に貢献できるようになります。

ファシリティマネジメントの具体例

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

では、ファシリティマネジメントの取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ファシリティマネジメントの具体例を4つご紹介します。

施設や設備の定期的なメンテナンス

ファシリティマネジメントでは、設備や施設を定期的にメンテナンスすることで劣化や故障、破損などを防ぎ、資産価値の低下や業務の滞りを未然に防ぎます。
こまめなメンテナンスを定期的に行うことで設備などを長く利用できるようになり、大規模修繕時のコストの抑制にもつながります。

省エネ化の促進

定期メンテナンスとともに、施設や設備内容を適切に更新して省エネ化を促進することも、ファシリティマネジメントの具体例として挙げられます。
例えば、断熱・除湿効果のある建材を使用する、エアコンや照明機器をエネルギー消費効率の高い新しい機器に入れ替える、車両をEV車にするといった省エネ対策は、ランニングコストの抑制だけでなくSDGsへの貢献にもつながります。

防災やセキュリティの強化

耐震性、耐火性といった防災機能の強化も、ファシリティマネジメントの一例です。避難経路を確保する、防災訓練を行っていざという時に備えるといった関係者の保護を目的とした取り組みも重要といえるでしょう。
加えて、盗難や不審者の侵入への対策や、サイバー攻撃に対する物理的な防御策など、防犯面の強化もファシリティマネジメントの一環です。

従業員の働きやすい環境づくり

オフィスの移転やフロアのレイアウト変更など、従業員の働きやすさを考慮した環境づくりもファシリティマネジメントの具体例として挙げられます。
レイアウトや動線の最適化により、従業員同士のコミュニケーションの活性化やストレスの抑制などといった効果も期待できるでしょう。

ファシリティマネジメントへの取り組み方

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ファシリティマネジメントは、建物のライフサイクルコスト(以下、LCC)をきちんと理解・把握した上で行わなくてはいけません。
また情報通信技術(以下、ICT)や独自の手法を活用し、部門横断で総合的に取り組むことが必要です。経営戦略・業務管理・実務の各レベルでファシリティマネジメントに関わっていくことが求められます。

状況に応じて実務レベルの身近なところから取り掛かる、つまりボトムアップができるのもファシリティマネジメントの強みです。

LCCとファシリティマネジメント戦略

ファシリティマネジメントに取り組むにあたって、まず知っておくべきことが建物のLCCです。建物のLCCとは、建物を建設してから解体廃棄するまでにかかる費用のことを指します。
新しく建物を建てるときには建設費にばかり目がいきがちですが、それは氷山の一角です。LCCには固定資産税・火災保険費・光熱費・消耗品費・警備費・清掃費・メンテナンス費といったランニングコストがかかります。加えて、修繕費・什器の交換費といった長く使うにつれて必要になる費用、解体費・処分費といった建物を処分するためにかかる費用も含みます。

竣工後から解体廃棄までにかかる費用は膨大で、建物の建設費の3~4倍の費用がかかるともいわれています。そのため、ファシリティマネジメントでは「建物を使い始めてからの費用を、快適性などを維持したままでいかに抑えられるか」という戦略が重要になります。

ICTの活用

ファシリティマネジメントは、人事・財務・ICTと並ぶ経営基盤です。ファシリティマネジメントの効率を上げるために、ICTも積極的に活用されています。
例えばITインフラや入退館管理システムの整備など、システム環境やその設備をマネジメントすることに特化したITファシリティマネジメントの需要も高まっています。

ファシリティマネジメントにおける3つのレベル

ファシリティマネジメントには3つのレベルがあります。
1つめは、経営的な観点から統括的なファシリティマネジメント戦略を策定する、経営戦略レベルです。全ファシリティの最適な在り方・目指すべき状態を定義し、そのために何をすべきかの計画を立てます。
2つめは、それぞれのファシリティを最適な状態へと改善することを目指す、業務管理レベルです。効率化や低コスト化など、業績向上やコスト削減といった企業経営に直結する業務管理を行います。
3つめは、日常業務の合理化・定量化を目指す実務レベルです。修繕や清掃などファシリティを維持していくために必要な日々の業務の改善に取り組みます。

この3つすべてのレベルでファシリティマネジメントに関わっていくことが大切です。
ファシリティマネジメントはトップダウンで推進されることも多いですが、状況によっては実務レベルからボトムアップで最適化に取り掛かることもできます。

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ファシリティマネジメント実践のポイント

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ここでは、ファシリティマネジメントの効果を高めるための実践のポイントをご紹介します。

ファシリティマネジメントの専門サービスに依頼する

自社の従業員のみでファシリティマネジメントに取り組むには、業務負担が増える事への懸念や専門的知見が不足する状況などが考えられます。
特に設備や機器などの定期的なメンテナンスや、内装工事を含むような大がかりなレイアウト変更などにおいて専門サービスを適宜活用すれば、従業員のリソース負担を最小限に抑えられる上に、プロの視点による適切な運用が可能です。

有資格者の有無を確認する

外部へファシリティマネジメントサービスを依頼する際には、有資格者の有無を確認すると良いでしょう。
前述したような、ファシリティマネジメントにおける有資格者である「認定ファシリティマネジャー(CFMJ)」をはじめとした、経験とノウハウを持つスペシャリストに計画を立ててもらうことで、自社に適した内容のファシリティマネジメントにつながることでしょう。

PDCAサイクルを回す

計画をただ実行するだけではなく、実践の中から改善点を抽出し、継続的にPDCAサイクルを回すことも重要です。計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)のプロセスを続けることで、より長期的に施設の価値を維持することができるでしょう。
効果的なファシリティマネジメントを行うために、PDCAサイクルを回して継続的な改善をはかることをおすすめします。

パソナ日本総務部にできること

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

パソナ日本総務部では、ファシリティマネジメントに密接するオフィスの空間設計や移転実務、レイアウト変更などのファシリティマネジメントサービスを提供しています。各業者の見積もり取得や調整、立ち会い・支払いまで一括対応することで、工数削減・納期短縮による効率化やコスト削減ができます。

またパソナ日本総務部では、総務や施設管理に日々寄せられるさまざまなリクエスト管理や、施設管理業務を自動化する総務マネジメントシステム「SINGU FM」のサービスを展開しています。また「戦略総務の実現」を目的とした、バックオフィスなど総務部に関連するさまざまな業務を代行するBPOサービスも提供しています。単なるタスクの外注による効率化だけでなく、最終的には導入企業の総務部門がより多くのノウハウを獲得できるようなソリューションを展開しています。

まとめ

ファシリティマネジメント(FM)とは?具体例やPMとの違いを分かりやすく解説

ファシリティマネジメントは施設の無駄を省き、するべき投資は惜しまないことでファシリティの最適化をはかります。スクラップ&ビルドの時代が終わった今、経営の効率化にはファシリティの管理にかかるコストを削減しつつ、質・価値・機能性などを向上させていくことが必要不可欠です。
この機会に、パソナ日本総務部のファシリティマネジメントサービスの導入をぜひご検討ください。

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