働き方の多様化にどう向き合う?今企業がやるべき2つのこと
働き方の多様化にどう向き合う?今企業がやるべき2つのこと
「働き方改革」という言葉が定着して久しい昨今、働き方の多様化を目指すことはあらゆる企業にとって重要な要素となりました。特に2020年以降は新型コロナウイルスの流行を受け、テレワークやフレックスタイム制の導入などに取り組み始めた企業も多くあるようです。 急速に全世界で広がった新型コロナウイルスの影響で、半強制的にどの会社も今までの働き方を見直す必要に迫られた今、改めて働き方改革の必要性やメリット、取り組むべき施策の例などについて解説します。
働き方の多様化が求められる背景とは?コロナ禍の社会的影響と合わせて解説
まず、なぜ今「働き方の多様化」が求められているのかを整理していきましょう。 ビジネスにおいて多様性が求められるようになった背景にはさまざまな要素が関わっていますが、特に近年大きな影響となったのが「新型コロナウイルスの世界的流行」です。
最初の緊急事態宣言が発令されて間もない2020年5月に実施した東京都の調査結果では、都内に拠点を構える従業員30人以上の企業におけるテレワーク導入率が、同年3月時点から2.6倍に増加したとあります。感染発生の報道から1年以上経過した今もなお感染拡大の波は止まらず、ビジネスにおいても「一過性」ではなく長期的な新型コロナウイルス対策が求められています。
感染予防対策のひとつとして必要となった「新しい生活様式」に合わせた働き方は、近年の働き方改革に大きな影響を与えたと考えられます。各企業では急ピッチで変革を推し進める形となり、それに伴う従業員間・部署間での連携体制など、従来の働き方では生じなかった新たな課題が生まれることになったのが昨今の情勢の特徴と言えるでしょう。
具体例としては、急速にテレワークの導入が進むことによって、新たに「エンゲージメントの低下」、「モチベーションの低下」が課題として取り上げられています。
テレワークの長期化で、社員同士が顔を合わせる機会が減りコミュニケーションがとりにくくなったことから生じていると言われており、会社の方向性を社員に伝えにくくなったことや、オンラインミーティングでは問いかけへの反応が希薄になりがちだといった意見も現場からあがってきています。これらの事象が、社員の離職や、生産性の低下につながっているとも言われており、企業として見逃すことのできない課題になっています。
参考:月刊総務「モチベーションに関する調査」
参考:東京都報道発表資料「テレワーク『導入率』緊急調査結果」
加えて、社会の変化にあわせて従業員が抱く価値観も多様化していることも、働き方改革の流れを後押ししています。一昔前であれば「仕事第一主義」が当然の考えとされていましたが、現在ではワークライフバランスを重視する層が増加しつつあるようです。
それに伴い、さまざまなライフスタイルに合わせた働き方を企業側が提示することが自然と求められるようになりました。在宅での就業環境構築といったハード面と、業務プロセスや指示系統といったソフト面の両方から、働き方の多様化を促進することがビジネスシーンにおいて必要不可欠となったといえるでしょう。
企業が行っている働き方の多様化に向けた取り組み
では、そんな社会情勢を受け、企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
テレワークの導入
テレワーク(リモートワーク)はIT技術の急速な進化や新型コロナウイルスの流行を受け、近年注目を集めている施策のひとつです。
オフィスという拠点を必要とせず、各従業員が自宅やコワーキングスペースで働くスタイルを指し、パソコンやさまざまなソフトウェアを活用しながら遠隔で仕事を進める効率的なスタイルとして、各社で普及が進んでいます。
時短勤務・時差出勤の導入
テレワークが「働く場所」の常識を覆す施策であるとすれば、時短勤務や時差出勤制度の導入は「働く時間」に変化をもたらす施策であるといえます。
時短勤務とは文字通り通常の就業時間よりも短い時間で仕事に従事するための制度で、育児や介護の必要がある層でも組織内で活躍できる仕組みとして支持されています。
時差出勤は始業時間・終業時間をずらして出勤を促す制度で、通勤ラッシュの回避や労働時間に縛られないライフスタイルの構築などをサポートするものです。
フレックスタイムの導入
時短勤務や時差出勤とは異なるアプローチとして注目を集めているのが、フレックスタイム制の導入です。
フレックスタイムとは従業員が自分の裁量で始業時間や終業時間を決定できる制度を指し、多様化する労働者のニーズに広く対応できる仕組みとして、各社で導入が進められています。フレックスタイムは多くの場合「コアタイム」という勤務が義務付けられた時間帯を軸に運用が行われるため、自由度の高さと効率的な人材マネジメントを両立できるメリットが期待できるとされています。
また、近年ではコアタイムを設けない「スーパーフレックス」という新たなスタイルも提唱されはじめ、一部企業でも実際に導入が始まっています。働き方の多様化は、場所だけでなく時間にも影響を与えているといえるでしょう。
時間単位の有給制度の導入
従来であれば半日・1日単位での取得が一般的だった有給休暇にも変化が生じており、近年では1時間単位での有給取得を認める組織も珍しくないようです。
細かな有給取得を推進することで各従業員のさまざまな事情に広く対応できる体制が整うとともに、最低でも年5日以上の有給休暇取得が義務付けられた現行法にも対応しやすくなるメリットがあります。加えて、企業側にも貴重な人的リソースを確保しつつ、適切な有給休暇の利用を推奨できる利点もあるといえるでしょう。
副業・兼業
働き方の多様化は労働時間の減少やワークスタイルの自由化といった要素ばかりでなく、「働ける機会を増やしたい」「本業とは異なるフィールドで自分のスキルを発揮したい」といったニーズにも応えることを指します。そこで、近年注目されているのが副業・兼業の奨励です。
従来では就業規則などで「副業禁止」をルール化している組織も珍しくありませんでしたが、最近ではむしろ奨励する企業も現れるようになりました。これらは、社会の価値観の変化を推察できるケースとも考えられます。
働き方の多様化による企業のメリット
労働者にとって働き方の多様化には数多くのメリットがありますが、企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット1:生産性が向上する
労働環境を是正し、働き方の多様化を認めることは結果的に生産性の向上に寄与するとされています。
通勤時間の削減や仕事におけるストレスの軽減、ライフスタイルや趣向に合わせた生活の変化といったメリットを受け、従業員のモチベーション改善や作業効率の向上といった効果が見込めることは、企業にとっても大きなメリットです。さらに、働き方改革のために必要となるITシステムの導入により、仕事における非効率的なアプローチが改善されることも生産性向上に寄与します。
メリット2:人材の獲得・定着に寄与
自由度の高い就業環境は労働者にとって大きな魅力となります。育児や介護、趣味の時間を重視する層はもちろん、意欲的に仕事に取り組みたい層も含めてさまざまな人材を獲得できる可能性が向上するとされています。
加えて、既に自社で活躍中のメンバーにも、組織への帰属意識や企業理念の理解度を指す指標である「従業員エンゲージメント」の向上による離職率低下・モチベーションアップといったメリットもあります。
メリット3:コスト削減できる
労働環境を改善して働き方の多様化に取り組む過程で、時間外労働における人件費やコワーキングスペースの活用などによる従来のオフィス運営コストを削減できることもメリットのひとつです。従来発生していたコストを抑えつつ生産性を向上させることもでき、結果的に大きなコストカットが期待できるとされています。
これらのことから、働き方の多様化に取り組むメリットは十分にあるといえるでしょう。
働き方の多様化による企業のデメリット
一方、働き方の多様化によって企業が背負うデメリットも存在します。
デメリット1:大きな変革が必要
働き方の多様化を実現するには、既存の業務フローや制度を刷新することが求められます。仕組みを変革させるためには膨大な手間とコストが必要となるため、大なり小なり何らかの負担を企業が背負う形になることがデメリットといえます。
とはいえ長期的な視点で見ると一時的な損失を上回る利益を見込むことができるため、入念な計画のもと進めていけば払拭できる可能性の高い懸念事項であるといわれています。
デメリット2:管理職に負担がかかる
労働環境の改善や業務の効率化、新たなルールの制定を進める上では、マネジメント層が一般の従業員に対しトップダウン的に新たな改革への対応を促す必要があります。そのため、通常業務に加えて新たなタスクを管理職が背負うことになることもデメリットのひとつです。
働き方の多様化にあたって取り組むべき2つのこと
さまざまなアプローチで行われている働き方の多様化ですが、実際に企業が優先すべき施策にはどのようなものがあるのでしょうか。
テレワークの推進
時代の変化に合わせた新たな働き方として注目を浴びているのがテレワークの導入です。特に昨今では新型コロナウイルス対策の一環として急遽導入を進めた企業も少なくないようです。
今後さらなる技術進化や社会の変化が進むことを予想すると、テレワークがもたらす「場所の自由化」や「移動時間からの解放」といったメリットが与える影響は一過性のものではなく、新たな働き方として社会に受け入れられていくことが予想されます。ほかにも、テレワークの導入時にはペーパーレス化やシステムのクラウド化といった要素も関わってくるため、結果として企業の生産性を大きく押し上げるチャンスであるとも捉えられます。
テレワークの普及やフレックスタイムの導入、副業の自由化などによってオフィスの価値を再考する機会が増えている昨今、実際に一部の中小企業やベンチャー企業では「完全リモートワーク化によるオフィスの解約」という選択をすることもあるようです。
とはいえ、コスト削減のみを求めてオフィスという拠点を手放すことには、また別のデメリットが生じる可能性があります。そこで推奨されるのが、コワーキングスペースの利用やフリーアドレス化といった「ワークスペースの見直し」というアプローチです。
従来の出勤が前提であった環境を見直し、コワーキングスペースの契約による拠点の分散化や固定席の廃止によるレイアウトの刷新といったアプローチを行い、多様化する働き方へフレキシブルに対応できる体制を構築しておけば、社会の変化に対応しやすい組織を目指すこともできるでしょう。
まとめ
組織は人材や業務プロセスの在り方といった「ソフト面」の改革に合わせて、オフィスやシステムなど「ハード面」の改革も行う必要があります。
業種や業態、事業規模などによってさまざまな障壁もあるものの、時代に合わせたビジネスの継続を目指す上では避けられない「働き方改革」について、この機会にぜひ再考してはいかがでしょうか。
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