業務プロセスとは?改善の目的や手順、成功させるや大事なポイントをくわしく解説
業務プロセスとは?改善の目的や手順、成功させるや大事なポイントをくわしく解説
業務プロセスとは、各組織におけるさまざまなタスクの進め方や流れを指します。 例えば、営業活動というタスクを分解すると、リード(見込み顧客)の獲得や初回のコンタクト、案件化後の商談設定、成約後の手続きなど、さらに細かなタスクに分解されます。これらタスク同士をスムーズにつなぐことがビジネス推進の原動力となる、という考え方もあります。 この記事では「業務プロセスの改善」に着目し、その目的や具体的な進め方なども含め解説します。
業務プロセスとは?
まずは業務プロセスについて理解を深めましょう。
業務プロセスとは、「業務の連なりや開始から終了までの流れ」のことです。
企業では、複数の業務が関わり合うことでひとつの事業が成り立っています。例えば、商品を販売するためにはまず「商品をつくる」必要があり、完成してはじめて「販売」ができます。また、製造や販売を成立させるには、それらを行う場を管理する総務、そして製造費や人件費を計算・管理する経理の存在も欠かせません。こうした業務の連なりと、利益を得るまでの一連の流れを業務プロセスと言います。
業務フローとの違い
業務フローとは、「特定の業務の開始から終了までに発生する細かい作業やその流れ」のことです。つまり、業務プロセスがひとつの事業全体の業務工程を表しているのに対し、業務フローは業務一つひとつの流れを表していると言えます。つまり、業務フローとは業務プロセスの構成要素のひとつとも考えられるでしょう。
ただし、状況によっては業務プロセスと業務フローを大別せず、同じような意味で使うこともあります。
企業が抱える業務プロセスの主な課題
企業が抱える業務プロセスの課題には、主に以下の3つがあります。
業務が属人的になっている
専門的な知識や、技術が必要な業務ほど属人化をまねきやすいと言われています。
もし、ある従業員しか対応できない業務があったとしても、業務が滞りなく進んでいれば問題はないかもしれません。しかし、その従業員の急な欠勤や何らかの事情による休職などがあった場合、業務が滞ってしまう可能性があります。
アナログな手法から移行できない
一部の業務によっては、デジタル化することで効率を高められる場合があります。しかし、デジタル化を得意とするIT人材がどの企業にもいるわけではありません。もしそのような人材が社内にいない場合には、アナログな手法からの移行が難しくなり、結果として効率化することが難しくなることがあります。
多様な働き方に対応できない
多くの企業がリモートワークを導入し、今や一般的な働き方として認知されるようになりました。しかし、業務によっては完全リモートになると進行が難しくなるケースがあります。このように、業務プロセスの課題によってリモートワークなどの多様な働き方に対応できない、ということが起きることもあるのです。
これらの課題がある場合は、業務プロセスに何らかの問題があると言えます。そのため、必要に応じて「業務プロセスの改善」に取り組んでいくことが求められます。
業務プロセスの改善とは
業務プロセスの改善とは、業務間のつながりや各作業の流れを整理して、より効率化することを指します。現状の業務プロセスでビジネスが問題なく進行していれば良いのですが、すべての組織がそのような健全な状態であるわけではありません。そこで、前述したような課題を解決するために、業務プロセスの改善に取り組む企業は多くあるようです。
業務プロセス改善とBPRの違い
ちなみに、業務プロセスの改善と近しいものに「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」があります。リエンジニアリングは経営戦略やビジネスモデル、各業務を再構築する行為を指し、BPRにはビジネスを継続的に改革していくといった意味があります。
つまり、業務プロセス改善は「現状の問題点を洗い出して解決を目指す」ための行為ですが、BPRはさらに踏み込んだ「現状を抜本的に変化させる動き」を指します。両者は似通っている部分もありますが、対象となるターゲットや範囲が異なる活動です。
業務プロセス改善の目的
業務プロセスの改善は、主に「効率化によりさらなる成長を目指す」「業務の標準化をはかる」「各業務で懸念されるリスクを回避する」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)の促進」といった目的で行われます。
効率化による業績向上
各部署で日々行われるさまざまな業務のなかには、何らかの原因で非効率的なオペレーションとなっているものもあります。例えば、過去の決算資料データを参照する時に、別途紙媒体のファイルも確認しなくてはならないケースや、エクセル内の書式が複数存在するためまず統一作業を行わなければならないケースなどがあたります。
こうした「業務の重複や無駄」を取り除き、タスクの進行をより効率的にしていくことが業務プロセスの改善です。効率化を進めることで組織全体の生産性が向上し、コストの削減や新たな取組みなどの活動にリソースを集中させられるようになり、ビジネスをさらなる成長に導くとされています。
業務の標準化によるリスクマネジメント
各業務のプロセスにおいてしばしば発生するのが、作業の属人化やブラックボックス化などの問題です。
特定の人材に依存しているオペレーションや、特定の人材でないと一定以上の成果を出せない仕組みは、その人材の異動や離職に直面した場合、業務の遂行ができなくなる可能性があります。また、継続的な成果を生み出せない業務の進め方は、ビジネスの成長を阻害するとも考えられています。
こうしたリスクを取り除くためにも、業務プロセスの効率化や改善を試みる必要があるでしょう。
組織の成長やビジネスの拡大を目指すうえで、より良い業務プロセスの構築は不可欠な要素といっても過言ではありません。
DXの促進
DXとは、AIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて既存の業務プロセスに変革を起こすことで、これまでにないビジネスモデルを創出し、自社の競争力を高めて売上や利益の向上をはかることを意味します。
経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表した2018年ごろから、DXの推進は企業にとって大きな課題となっています。これを受けて、既存の業務プロセスのままデジタル技術を導入する企業もありますが、仮に業務プロセスそのものに問題がある場合、スムーズなDX推進は難しいと考えられます。
この点からDXを推進するためには、まず業務プロセスに問題がないかを確認し、改善していく必要があるでしょう。
業務プロセス改善の流れをステップ別に解説
業務プロセスの改善はビジネスの発展を目指すうえで重要な課題ですが、いざ取り組もうとした場合に何から始めれば良いか判断がつきにくいこともあるでしょう。
業務プロセスは「現状分析→課題の把握→KPIの設定→解決策の実行→効果測定」のように、PDCAサイクルを意識して改善すると効果的だと言われています。以下では、ステップ別に業務プロセス改善の流れをくわしく解説します。
課題を洗い出し、現状の問題点を模索する
業務プロセスの改善は、まず各タスクにおける問題を洗い出すことからはじまります。
現状の分析を行うことで、例えば「総務部門と他部署の連携体制が不十分」「特定のタスクに工数がかかりすぎている」といった課題を発見できると考えられています。
問題点を洗い出すと、「どのような要素を見直せば改善につながるか」などの具体的な打ち手を検討できます。この時、各業務やタスク同士がどのように結びついているかを図式化することも課題の発見に効果的です。
改善で得られる期待値を試算し、優先度を明確にする
現状分析と課題の洗い出しができたところで、「業務プロセスの改善でどのような効果が得ることができるか」といった要素を考え、そのうえで人員配置や予算配分などの計画を具体的に決定します。
業務プロセスを見直す時によくある失敗のひとつが「ほかの業務に追われて改善への作業が進まなくなる」といったものです。メイン作業の遂行は当然優先すべきものですが、時には業務改善を最優先に行うことが結果的に業績へのプラスに働くこともあるでしょう。そのため、業務プロセス上の問題の深刻度合いや重要性を細かく推し量る必要があります。
業務プロセス改善によって得られる期待値を試算し、定量的な観点から進め方を判断することが重要であると考えられています。
プロセス改善のKGIとKPIを設定する
業務プロセスの改善で得ることができる効果やメリットが把握できたら、続いて「改善目標とそれを達成するために行うべきこと」を設定します。つまりKGIとKPIを具体的に定めるのです。
KGIとは重要目標達成指標の略語で、最終的に達成するべき目標を表した言葉です。KPIは重要業績評価指標の略語で、KGI達成のための基準となる指標を立てることを指します。「業務プロセスの改善とそれによる事業へのプラス要素」をKGIとして設定し、到達するためにやるべきことをKPIとして設定していくことは、業務プロセスを改善するために必要な事柄のひとつと言えます。
具体的な改善方法を考え実行する
KGIとKPIを設定した後は、継続的に改善していくための施策を具体的に考え実行します。
例を挙げると、「業務プロセスを改善して効率化をはかり、業績向上を目指す」ために、「ペーパーレス化」「ツール導入による定型業務の自動化」「アウトソーシングの活用による工数削減」などを目指すことがこれにあたります。
上記のように改善のために取り組むべきことを具体的に考え、実行するサイクルを回し続けることこそが、業務プロセス改善の根幹となるとされています。
また、実行するだけで終わらず、行った施策がどのように具体的な改善へ寄与したかを都度検証していくことも重要です。
施策の効果測定はPDCAサイクルのC(Check)にあたり、成否を問わず中長期的な視点を持って「改善のために行ったことが、どんな結果をもたらしたか?」を突き詰めていくのが良いとされています。施策が改善に寄与していなければ内容の見直しや別のプランを実行する、成功していた場合は一番の要因を探り、さらなる改善につなげていくと良いでしょう。
業務プロセス改善を成功させるポイント
業務プロセスの改善を成功させるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
従業員に業務プロセス改善の重要性を周知する
業務プロセスの改善を行う前に、まずはその重要性を従業員に周知しましょう。
各業務の担当者は現在の手順に慣れており、変更することに対して抵抗があるかもしれません。また、新たな手順に慣れるまでに時間がかかる可能性もあります。その結果、「以前のやり方のほうが良かった」という不満が出ることもあるでしょう。
多くの場合において、こうした問題は業務プロセス改善の重要性を従業員に理解されていないことが原因で起こり得るものです。こうした事態を回避するためにも、業務プロセスの変更がどのような理由で行われ、どのような変化をもたらすのかを必ず説明しましょう。
このときに、「時間外労働が減る」「休暇を取りやすくなる」などの従業員にとってのメリットも伝えることで、より理解してもらいやすくなるでしょう。
改善後も定期的に見直す
業務プロセスの改善は一度で終わりではありません。改善したことで良い成果を得られたかどうか、効果検証を行う必要があります。もし思うような成果が現れていない場合は、改善策自体を見直すことも重要です。
つまり、「業務プロセスの改善に終わりはなく、PDCAサイクルを繰り返す必要がある」ということです。
例えば、業務プロセスを改善するためにシステムやツールを導入した場合は、導入後にどういう成果が出たのか、あるいは出なかったのかをチェックしましょう。その結果を見て、改善の余地があるか否かを判断する必要があります。
なお、この場合の「システム・ツールの導入」はあくまで改善に向けた手段の一例です。導入そのものを改善の目的としないように注意しましょう。
PDCAサイクルを繰り返すことで、最適な業務プロセスに近づけることができます。一度改善策を実行した後も、定期的な見直しを行うようにしましょう。
こまめに現場の声をヒアリングする
業務プロセスを変えた後は、必ず現場の声をヒアリングしましょう。
業務プロセスの改善による影響を大きく受けるのは、現場の従業員です。そのため、変革後は現場に混乱が生じていたり、従業員がストレスを感じていたりする可能性があります。こうした問題にうまく対処するためにも、「何か困っていることはないか」「問題は生じていないか」「ほかに改善できるところはあるか」などをこまめにヒアリングし、現場の実態を把握することが重要です。
もし問題や課題が生じている場合は、変革した業務プロセスをさらに見直す、サポートを強化するなどで、従業員の負担を和らげることができます。
外部サービスを活用する
業務プロセス改善の手段のひとつに、外部サービスの活用が挙げられます。具体的なサービスとして、BPOやRPA、コンサルティング、クラウドストレージの活用などがあります。それぞれのサービス内容については次項で詳しく解説しますが、もし、自社の力だけでは業務プロセスの改善が困難な場合は、こうしたサービスを活用するのも一案です。外部の視点やアイデアを取り入れることで、改善が難しいと思われていた業務プロセスを見直すことができ、最小限の労力で改善を実現する可能性があります。
業務プロセスの改善に役立つサービス・ツール
ここでは、前項でご紹介した業務プロセス改善に役立つ外部サービスの代表例について、詳しくご紹介します。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
BPOとは、業務プロセスの一部や全部を一括して外部の専門会社に委託することです。BPOに適した業務には、例えば総務や人事、経理などの管理部門におけるノンコア業務(※)や、自社には運用ノウハウがない業務などが挙げられます。
※直接的には利益を生み出さないものの、企業活動の推進をサポートする業務
BPOを活用した場合、業務プロセスそのものを委託できるだけでなく、その改善まで任せることができます。そのため「自社だけでは業務プロセスの改善に限界がある」という場合は、積極的な利用を検討しても良いでしょう。
なお、パソナ日本総務部では「総務BPOサービス」を取り扱っています。特に総務部門における業務プロセス改善にもお役立ていただけるので、ぜひ利用をご検討ください。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
RPAとはロボットによる業務の自動化を指し、単純な作業やルーティン業務を人間に代わってロボットが正確に処理するシステムです。
RPAを導入した場合、人間が手作業で業務を行った時に必ずと言ってよいほど起こる作業ミスが防止でき、スピード向上も図れるため業務プロセスの効率化が進みます。そのため、データ入力やリスト作成、ディスプレイ画面の文字・色の判別など、RPA向きの業務があれば導入を検討してみるのも良いでしょう。
コンサルティング
業務プロセスの改善に初めて取り組む場合は、コンサルティングを利用するのも有効です。自社の現状調査・分析を行い、業務プロセス上の課題を洗い出したうえで業務改善策を提案してくれるため、従業員に大きな負担をかけずに業務プロセスの改善をはかることができます。
コンサルティングでは多くの場合、業務改善策の実施はもちろん、その後の効果検証(PDCAサイクル)まで対応してくれるため、継続的な業務改善による効果が見込めるでしょう。
クラウドストレージ
クラウドストレージとは、データをインターネット上のストレージに保存し、いつでもどこからでもアクセスできるサービスです。「円滑な情報共有が可能になる」「社外からもアクセスできる」などさまざまなメリットがあるため、業務プロセスの改善に役立つ可能性があります。
たとえば、自社サーバーを使用してファイル共有を行う場合、一つのファイルを複数の人が同時に編集することはできない場合が多いようです。その場合、一人がファイル更新をしていると、更新が完了するまで他の人は待たなければなりません。しかし、クラウドストレージを利用する場合は複数の人が同時に編集できるため、更新が完了するまでの待ち時間を削減することができます。
業務プロセス改善をはじめる前に、まずは業務の可視化に取り組もう
今回はビジネスにおいて重要な業務プロセスを改善することの必要性や、具体的な業務プロセス改善の方法などをご紹介しました。
プロセスを見直し、効率化・生産性向上を目指すうえでは、文中でも触れたように「非効率的なオペレーションを見直す」「自動化やアウトソーシングにより工数削減をはかる」といった施策が有効とされています。
業務プロセスにどのような問題が生じているかは組織によりさまざまですが、多くの場合はいわゆる「ヒト・モノ・カネ」に関する問題や、既存のシステムや業務フローを使い続けざるを得ない事情などが要因であると言われています。
パソナ日本総務部では、企業の業務プロセスを見える化し、改善をサポートする「業務量調査・業務見える化サービス」を提供しています。
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