「施設管理」と「設備管理」の違いとは?資格の必要性から仕事内容まで徹底解説!
「施設管理」と「設備管理」の違いとは?資格の必要性から仕事内容まで徹底解説!
「施設管理」と「設備管理」は似ているようで内容の異なる業務であり、それぞれの業務を行うにあたり、取得が推奨されている資格も大きく異なります。とはいえ、具体的にどのように違うのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「施設管理」と「設備管理」の違いや、それぞれに必要な資格などについて詳しく解説します。
施設管理(ビルマネジメント)とは
施設管理はビルマネジメント(ビルマネ)とも呼ばれており、一部ではプロパティマネジメントと称されることもあります。施設管理は、建築物を総合的にマネジメントする役割と捉えると良いでしょう。具体的には、建物そのものの維持・管理のほか、修繕計画の作成などを担います。他にも、建物に入居するテナントの誘致や入居・退去時の対応なども行います。また、入居者や利用者が快適に空間を利用できるように美観や衛生的環境を整えることや、建物における館内規則の作成、保安警備や防災管理を徹底して安全性を保つといった監督業務も含まれます。
本来はビルのオーナーが行う業務全般を代行して行い、建物を運営していくのが施設管理という仕事です。対象となる主な施設は、オフィスビルや商業施設、大型ショッピングセンター、病院、学校、その他の事業用収益物件などが挙げられます。
設備管理(ビルメンテナンス)とは
設備管理はビルメンテナンス(ビルメン)とも呼ばれており、建物の設備を維持し、利用者が安全かつ快適に利用できるようにするための仕事を指しています。
一般的に、「ビルメン」と呼ばれる場合には「設備管理」を指しているケースが多く、建物のなかにある設備を点検・保守、故障時の修理や交換などをする役割を担っています。
設備管理の対応範囲としては、重要なインフラである電気や水道系の設備、エレベーターやエスカレーター、自動ドアなどの機械設備、快適性にかかわる温度や湿度を管理する空調設備、ポンプや貯水槽などの排水設備、警報器や避難器具などの防災設備といったさまざまなものが該当します。
もし設備管理がずさんな状態が続くと、建物の価値が著しく低下するだけでなく、日々のメンテナンス不足が原因で莫大な費用のかかる大規模修繕が必要になるケースがあります。ほかにも、適切でない排水や排ガスによって、施設利用者だけでなく周辺地域の環境・健康面にまで影響を及ぼすおそれもあるでしょう。
設備管理の最適化は、施設を長期間にわたって健全な状態を保つことだけでなく、企業の社会的責任を果たすという側面からも重要な業務だと考えられます。
施設管理と設備管理の違い
前述のように、施設管理は「ビルのオーナーが本来行う管理業務を代行する仕事」です。一方の設備管理は建物に設置されている設備に関する保守・点検業務が主な仕事であり、業務範囲が大きく異なります。
施設管理は建物の運営を全般的に行いますが、設備管理が担当するのはあくまでも設備の点検や保守に集中しており、テナント誘致や館内利用ルールの策定などには携わりません。
施設管理のほうがビルのオーナーに近い立ち位置で業務を行うため、一般的に設備管理よりも上流工程にあたるとされています。ビルのオーナーが施設管理の専門会社に業務を委託し、さらに施設管理会社が建物内の設備管理を専門会社に委託するという流れが一般的です。
施設管理はビルのオーナーやテナントと打ち合わせの機会が多いことから、スーツを着て定常業務にあたるケースが多いようですが、設備管理は点検・保守業務を主に受け持つことから作業着を着用しての業務が多い傾向にあります。
施設管理の職務に求められる適性として、高度なコミュニケーション能力が挙げられます。これは、「テナントに説明を行う」「テナントやオーナーからのクレームに対応する」「現場の設備管理スタッフの仕事を監督する」といった業務を行うためです。
加えて、社会的なニーズを常に注視し、経営状況を把握した上で中長期的な修繕計画を立案するような、ビジネス面における視野の広さも求められます。
一方で設備管理職の場合は、現場の細かい業務に臨機応変に対応できるような知識と技術力が必要です。施設の設備においては老朽化が進んだ古い設備と、機能性が高度化した最新の設備が混在している場合もあるため、幅広い専門的知識も求められるでしょう。
施設管理(ビルマネジメント)に求められる資格
施設管理(ビルマネジメント)に求められる資格は、建物の運営に関連するマネジメント系の資格が代表的です。しかし技術的な資格も持っていれば、よりスムーズに業務を進められるでしょう。ここでは施設管理(ビルマネジメント)におすすめの資格を紹介します。
持っておくと良い技術的資格
施設管理は、必ずしも資格を取得しなければ業務に携われないというわけではありません。しかし、建物を総合的に運用する立場になるため、以下のような資格取得が推奨されています。
例えば建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)は、建築物の衛生的環境の維持管理を監督することができる国家資格です。エネルギー管理士も国家資格で、エネルギーの使用方法の改善、管理に従事するための資格です。
ほかにも電気設備の安全を守る電気工事士や、空調・温水ボイラーの操作・点検ができるボイラー技士、消防法による危険物を扱う際に必要な危険物取扱者など、技術的な専門性も身につけておくと良いでしょう。
加えて認定ファシリティマネジャー資格は、企業や団体が管理する施設を経営戦略の観点から企画・運用・維持・管理ができる認定制度です。厳密に言うとファシリティマネジャー職に就くにあたって資格は必要ありませんが、資格を保有しておくことで施設管理者としての信頼性が高まるでしょう。
さらに宅地建物取引士(宅建)、ビル経営管理士といったマネジメント視点の資格も取得しておくと施設管理業務を進める助けなるでしょう。
設備管理(ビルメンテナンス)に求められる資格
一方で、設備管理(ビルメンテナンス)に求められる資格は、設備点検にかかわる技術的な資格がメインです。設備管理に携わるようになってすぐに取得しておきたい資格、中級の設備管理を担当する人が挑戦しておきたい資格、責任者になるにあたって取っておきたい資格とわかれるため、それぞれの推奨資格をご紹介します。
早めに取得がおすすめの設備管理(ビルメンテナンス)資格
設備管理として働くことを考えているのであれば、電気工事士(第2種)、消防設備士(乙種)、冷凍機械責任者(第3種)、危険物取扱者(乙種)、ボイラー技士(2級)といった資格はできるだけ早めに取得しておくことをおすすめします。建物のなかのさまざまな設備を点検・保守するためには、どれかひとつの設備だけでなく、多くの設備に関して専門知識を持っている必要があるためです。
ひとつの建物には電気や消防設備、空調など数多くの設備が備わっていることから、一つひとつに対応しようとすると資格の数も膨らみやすい傾向にあります。 とはいえ、施設管理と同様に必ずしも資格を取得しなければ設備管理として働けないというわけではありません。それでも資格を取得することによって自身の業務の幅が広がり、設備管理のなかで責任者としての立ち位置に近づけるチャンスも生まれる可能性があるため、余裕をみてぜひ資格取得にチャレンジすることをおすすめします。
電気工事士(第2種)は国家資格ながら比較的難易度が低めの試験で、例年60~70%の合格率で推移しています。業務未経験の状態で勉強を始めたとしても、十分な対策を行えば合格の可能性があります。
消防設備士には甲種と乙種がありますが、設備管理には乙種の取得が推奨されます。こちらは電気工事士(第2種)に比べてやや難易度は高めになるものの、40%前後の合格率になることが多いため、決して合格率が低い試験ではないと言えます。
冷凍機械責任者(第3種)は全科目受験でおおむね40%程度に落ち着く場合が多いようです。
どの試験も飛び抜けて合格率が高いというわけではありませんが、低いとも言い切れない水準のため、事前に万全の対策を行って挑戦すると良いでしょう。
中級の設備管理(ビルメンテナンス)資格
中級になってから取得しておきたい設備管理資格には、電気工事士(第1種)や冷凍機械責任者(第2種)、ボイラー技士(1級)などが挙げられます。いずれも前述の早めに取っておきたい資格に比べると、難易度は高めであり合格率は低めの傾向にあります。
例えば電気工事士(第1種)は、試験全体で合格率が30%台後半を記録することが多く、電気工事士(2種)などに比べるとやや難易度が高いと言えます。免状を発行するためには実務経験が3年以上必要になりますが、試験自体は実務経験がない状態でも受験できるため、合格できるだけの学力がついたと判断できた段階で受験するのも手段のひとつです。
冷凍機械責任者(第2種)は1~3種のなかで最も合格率が低い試験で、全体を通して30%台前半に留まります。とはいえ、試験としては決して低い数値ではないため、十分な対策を行っていれば合格はできるでしょう。
ボイラー技士(1級)は試験としてはそれほど難易度が高いわけではないものの、先に2級を取得しておかなければ受験できない点には注意が必要です。
責任者が持つべき設備管理(ビルメンテナンス)資格
責任者になる頃に取得しておきたい設備管理資格としては、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)、電気主任技術者(2種、3種)、エネルギー管理士、冷凍機械責任者(第1種)などが挙げられます。
建築物環境衛生管理技術者は「ビル管理士」や「ビル管」などと呼ばれている資格で、これまでにお伝えしてきた資格と比べると難易度が高い試験です。
オフィスビルやデパート、映画館などの大規模な施設を管理することが想定されている試験内容で、単に設備を管理するだけでなく、建物に関連するマネジメント業務の内容も求められます。合格率は例年10%台と低く、専門知識を身につけた上で十分な対策を行っていても合格が難しい試験のひとつといえます。
電気主任技術者(2種、3種)も合格率が10%を下回る年もあるなど、難易度が非常に高い試験です。一方で、エネルギー管理士や冷凍機械責任者(第1種)は20~30%程度の合格率を有しており、比較的取り組みやすいでしょう。
施設管理市場の成長性は?
施設管理の市場は、世界的に成長傾向にあると言われています。2022年には499億米ドルと評価された全世界の施設管理市場は、2031年には1369億米ドルに達すると示唆されています。これは、2023年から2031年までの複合年間成長率(CAGR)で11.8%に相当します。
施設管理市場が成長している主な要因としては、世界人口の増加と都市化の進展に伴い、オフィスビル、商業施設、工場、病院、学校などの施設の需要が増加していることが挙げられます。加えて、インフラの老朽化と建物の耐震化による施設の更新、さらには環境問題への取り組みにおける省エネや運用効率といった側面への対策も、施設管理市場が伸びている理由といえるでしょう。
国内に目を移してみると、働き方改革やテレワークの普及に伴うオフィスのあり方の見直しという観点からも、施設管理の重要性が高まっている理由を読み解くことができます。さらに、オフィスビルの築年数経過による建て替えなど、建設ラッシュを迎えていることもそのひとつと考えられるでしょう。
今後も、施設管理市場は成長が続くと予想されます。施設管理の専門知識や技術を有する企業は、さらなる需要に応えていくことが求められています。
ハード・ソフトの両面管理が求められる
施設管理は、建築物全体を適切な状態で維持・管理することが求められる業務です。今後、施設管理の重要性はますます高まっていくと考えられます。市場の成長を支えるポイントとして、ハード面とソフト面の両方の高度な管理が求められるでしょう。
施設のハード面の管理としては、安全性と快適性の確保が不可欠です。建物と設備の老朽化を遅らせるとともに、災害や事故の発生を未然に防ぐ必要があります。建物の耐震性能の不足や、エレベーターや空調などの建築設備の老朽化が見られる場合、地震や台風などの災害が発生した際に倒壊や損壊、故障のリスクが高まるためです。
ハード面の管理は、施設の価値を維持・向上させるためにも重要です。建物の外観や内装を定期的にメンテナンスして美しく保つことで、施設の魅力と共にユーザーの満足度も高まります。加えて、環境に配慮した施設づくりは時代の要請に応えることにもなるため、施設の価値を高めつつ社会からの評価獲得にもつながるでしょう。
一方、ソフト面の管理としては、施設の利用者に対する安全教育や避難訓練などを行い、有事の際にも被害を最小限に抑えられるよう取り組む必要があります。安全教育や避難訓練が不十分な場合、災害が発生した際に適切な避難行動が取れず、被害が拡大する可能性もあるため留意する必要があります。
施設管理のIoT化が求められる
施設管理に最先端のIoT技術を取り入れた「スマートビルディング」への進化も、時代の流れとともに需要が高まっています。
IoTとは「モノのインターネット」のことです。照明や空調設備といった設備機器をインターネットと相互連携することで、自動制御やトータル管理を実現し、安全性や快適性、エネルギー効率などを高めるといった効果があります。
IoT化が進む前からも、人感センサーや温度・湿度センサーといった機能を連携させて一元管理する「BAS(ビルオートメーションシステム)」と呼ばれるシステムが普及しており、「インテリジェントビル」とも呼ばれていました。これらと施設管理のIoT化との違いは「インターネット回線につながっているかどうか」という点にあります。
BASは基本的にインターネット回線とはつながっておらず、施設の設備機器同士の連携にとどまるものでした。一方で、施設管理のIoT化では、空調設備、照明機器、電力設備、エレベーター、会議室、トイレといったさまざまな建築設備をインターネット回線につなぐことで各設備の高度な連携を実現しています。そのため、各設備の利用状況のデータを収集し、施設外のセンターで遠隔管理・操作を行うことも可能です。利用者のニーズの把握や、施設のレイアウト改善にも役立てることができるでしょう。
まとめ
施設管理(ビルマネジメント)と設備管理(ビルメンテナンス)はそれぞれ業務内容が異なります。それぞれ推奨される資格も異なるため、どのような資格を取得することが望ましいのかを十分にリサーチしておきましょう。
また施設管理と設備管理は業務内容が異なるものの、お互いが密接に連携しあう関係にあります。パソナ日本総務部では、施設管理と設備管理の両方で発生する不具合対応や点検などの情報を、一元的にマネジメントするファシリティマネジメントシステム『SINGU FM』を提供しています。『SINGU FM』に自動蓄積されるデータを活用すれば、日々のリクエスト対応状況や保全タスクの実施状況、コスト適正化などの見える化を実現します。
またパソナ日本総務部は『SINGU FM』のテクノロジー提供だけでなく、施設管理を担う総務業務全般のアウトソーシングにも対応しています。総務業務や施設管理の見える化や工数削減・コスト削減を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。