総務のDX、何から始めればいい?~IT化とDXの違いとは~
総務のDX、何から始めればいい?~IT化とDXの違いとは~
新型コロナウイルス感染症がパンデミックからエンデミックへと推移しつつある中で、withコロナ状態は今後もしばらく継続していくと考えられます。リモートワークによる働く場の分散・テクノロジーツールの導入などにより、会社経営の見直し・業務フローの再構築に直面している企業は多いはずです。変化の渦にある今、企業運営の基盤となる総務のDXは、ますます重要になってきています。
この記事では、総務のDXを何から始めるかについて解説します。
総務のDXを実現する上で重要なポイント
日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の定義では、DXの本来の意味は「トランスフォーメーション with デジタル」。何かを変革するため、何かを目指すためにデジタル(テクノロジーツール)を使うのが本来のDXです。
つまり、手段(どのようにしてDXを実現するか=HOW)に終始するのではなく、目的(何のために、何を目指してDXを進めるのか=WHAT)を明確に定め、そのための手段を模索し実行することが重要なのです。「どのような会社を目指すのか、それはなぜか」を見定め、「そのためにどうテクノロジーツールを使うのか」を考える必要があります。さらに、その結果何がどう変わったのか、効果検証・分析をすることも大事です。
しかし、今世の中で言われているDXは、「HOW=どうやってテクノロジーツールを取り入れようか、どうやって効率化しようか」にばかり注力しているきらいがあります。まずはこの意識を変えて、「WHAT」を先行して考えるようにするべきです。
総務のDXにおける「WHAT」~何を目的としてDXを進めるのか~
働く場の多様性、「広義のABW(アクティブ・ベースド・ワーキング)」の実現
ニューノーマルの時代において、働く場はもはや従来のオフィスだけではありません。在宅・シェアオフィス・コワーキングスペースなど多岐にわたります。また最近ではワーケーションという言葉も登場し、さまざまな事例が出てきています。つまり、今や仕事場はひとつではなく、社会のさまざまな場所で仕事ができるということです。
総務にとって「働く場の選択肢を豊富に提供する」というのは非常に重要で、なおかつ、「社会全体を通してABW(※1)を実現する=広義のABWの実現」を意識する必要があると言えるでしょう。
(※1)ABWとは
Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の頭文字を取った略称。時間や場所に限定されず「いつ・どこで働くか」を働く人自身が自由に選択できるワークスタイルを指す
VUCA時代への対応
何が起きても不思議ではない・何が起こるかわからないとされる「VUCA時代」を生き抜けるかどうかは、環境適応のためにいかに会社を変えられるかにかかっているとも言えます。自社にとってのリスクを素早く情報収集し、瞬時に情報共有する術が必要不可欠となります。この実現に役立つのが、テクノロジーツールやBPO(※2)です。
テクノロジーツールを駆使して多くの情報を得て、観察・分析、自社事化して仮説を立て、決断・実行する。事務作業など可能な範囲はBPOに任せ、総務は考える・戦略を立てる分野に集中する……こういった対応が必要です。
(※2) BPOとは
ビジネス・プロセス・アウトソージング=自社業務を継続的に外部の専門会社に委託すること
戦略総務への進化
変化の時代にある中で会社を変えるためには、その基盤を担う総務から変わる必要があると言えます。具体的には、従来のオペレーション総務・管理総務から、戦略総務、つまり「考える総務」への進化が求められます。オペレーション業務や管理業務をBPOで委託化する、もしくはテクノロジーツールに置き換えることで、総務は考える時間とリソースを確保できるようになるはずです。
総務のDXにおける「HOW」~DXの具体的な進め方~
可視化:業務プロセスを可視化し、いる・いらないの見極め
業務の見直し・改善をすることなく、現状のままいきなりテクノロジーツールやBPOに置き換えるというのはナンセンスです。まず行うべきは、業務プロセスの可視化です。
業務改善の王道は、「やめる・減らす・変える」。この三軸に沿って、「この業務は本当に必要か?」「これだけの工数をかける必要はあるのか?」「やり方はこれでいいのか?」と、業務の目的・価値・必要性を見定めましょう。業務をテクノロジーツールに置き換えるにしても、BPOを活用するにしても、まずは「いる・いらない」を見極めることが必要です。
タスク分解:どこまで人が行い、どこからテクノロジーに置き換えるのか
DXに向けて「タスク分解」も重要です。これは「どこまで人(社員)が行って、どこからテクノロジーに置き換えて、どこをBPO(外部委託先企業)に任せるのか」を見極めて振り分けるということです。この考え方の基本は、「得意な人に得意なモノを任せる」です。機械の方が得意な作業は機械に任せる、BPOに任せた方が効率的な作業はBPOを活用する、そして社員は社員だからこそできる業務、つまり「考える」「戦略を練る」にフォーカスするというわけです。
テクノロジーツールの活用
「テクノロジーツール」と一口にいっても、世の中には多種多様なテクノロジーツールが存在しています。
例えば、人がPC上で行なっている業務プロセスをロボットで自動化する「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」、人工知能を利用した自動会話プログラム「チャットボット」、あらゆるモノをインターネットに接続する技術「IoT」。こういった多様なツールの中から自社にとってどんなツールが有効なのか見極め、取り入れていくべきです。
データ化と分析
テクノロジーツールの活用により、さまざまな情報が得られます。例えば、労働時間や会議室の利用状況・利用時間、ビデオ会議の利用状況・入室時間・時間数・接続状況・チャットの利用状況などです。重要なのは、「得られた複数データをかけあわせてそこから何を読み解くか」です。データ化、そしてデータの掛け合わせによって状況の可視化が可能になり、予兆を得たり予測を立てたりすることができます。また、効果検証も可能になります。「当社ではこういうテクノロジーツールはあまり必要とされていないようだ」あるいは、「こういうサービスが必要のようだから、そこを手厚くしよう」など。データ化とそれらを使った分析は、総務のDXにとって非常に大切だと言えます。
まとめ
このVUCA時代・コロナ禍という急速に変化する時代においてはことさら、世の中の情報をキャッチしながら方向性を予測して行動を起こすことが重要です。総務においては、会社の先頭に立って変化の生み手になるべきだと言えます。
もちろんそれは簡単な作業ではないでしょう。しかし、変化を起こすことで自分自身が成長し、まわりや組織も成長、ひいては会社が成長していきます。変化を恐れず会社を成長させ続けるのが、戦略総務の役目。総務が変われば、必ず会社は変わるはずです。
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昨今よく耳にする「DX」という言葉。なんとなく聞いたことはあっても、具体的にどうすればよいのかイメージできていない方も多いと思います。ぜひ総務におけるDXの理解にこちらの資料をお役立ていただけたらと思います。
監修者プロフィール
株式会社月刊総務 代表取締役社長
戦略総務研究所 所長
一般社団法人FOSC 代表理事
一般社団法人ワークDX推進機構 理事
豊田 健一 氏
株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。
現在は、戦略総務研究所所長、一般社団法人FOSC代表理事、一般社団法人ワークDX推進機構の理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。